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2025/02/01: Nothing Important 全曲解説



はじめに


罅のカヤハラ(Gt.Vo.)です。今日はNothing Importantの全曲解説をしようと思います。よろしくお願いします。

Nothing Importantクロスフェード + ボーナストラック動画です。くそふざけてるけどいい動画だと思います。


罅について


罅は大学時代に同じ軽音サークルに所属していた4人で結成したバンドです。
名前はかなり読みづらいですが「ひび」と読みます。椎名もたさんの "アストロノーツ" の歌詞から取りました。

バンドと名乗っていますが、バンド関連の活動よりボードゲームをしていることのほうが圧倒的に多く、
実質「バンドもやってるボードゲームサークル」です。俺はオルレアンが好きです。

また、最近はポケポケ(Pokémon Trading Card Game Pocketというポケモンカードのアプリ)が流行っています。
トップページに各メンバーのフレンドコードがあるので良ければフレンド登録してください。


first_line_screenshot

結成直後のLINE。このあと数か月間オサダは読み方を知らなかったらしい。


Nothing Importantについて


罅の「1st Full Best Demo Album(自称)」です。2025/01/31にリリースされました。
結成直後から「毎月曲を書き、2か月に1度スタジオに集まり2曲レコーディングする」というスタイルで作成してきたデモをまとめたアルバムです。
作詞作曲やRec/Mixは全て俺が担当しています。どうしてこんなストイックな制作体制なのか、それは誰も知らない……。

ジャケットは「はれの日は憂鬱」さんにお描きいただきました。
ジャケットに悩んでいたところBassVI担当のオサダから紹介してもらい、まさに理想通りの作風ですぐにご連絡しました。
こちらの急な依頼にもご快諾頂き、最高のジャケットを描いていただきました……。本当に最高です。最高だ……。本当にありがとうございます。


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Nothing Importantのジャケット。本当に最高。




全曲解説



1. 8


実家で飼っていた「ハチ」という犬のことを考えながら書きました。
ハチは自分が6歳の頃に家族で迎えた犬で、小学生の頃は毎日一緒に散歩していました。
当時のことを思い出すと、自分が自転車に乗ってハチは自力で走ってと田舎のあぜ道を一緒に爆走したときのことが一番に思い浮かびます。
(危険なので真似しないでください。当時は自分も子供で分別がついていませんでした。)

当時を思い返すと、ハチに対して「十分可愛がれた。大事にできた。」という気持ちがある一方で、
自分が子供だったこともあり「本当はもっと幸せにできたんじゃないか?もっとできたことはあったんじゃないか?」という後悔・負い目に近い気持ちもあります。
しかし、ハチは数年前にこの世から去ってしまったためそれを確かめる術はもう全くなく、ただ自分の心にその問だけが残っています。

歌詞にたびたび現れる「風」のモチーフは、木下龍也さんの「愛された犬は来世で風となりあなたの日々を何度も撫でる」という短歌から引いています。
ちなみに罅は歌詞とコード譜を未公開曲含め全て公開しています。(罅 コード譜集)


hachi

ハチです。物静かで優しい犬でした。


影響を受けた曲


2. 旧海域


Outerwildsという最高のゲームがあります。
ネタバレNGのゲームのため詳細は話せないのですが、本当に良いゲームだったのでぜひプレイして欲しいです。
サントラも最高で何度も聞きました。そのうち "Timber Hearth" という曲のフレーズを基に、この曲のAメロのリフが生まれました。

アウトロの大団円パートについては、2024年夏にオサダ&ヒラコと楽器を買いに行き、オサダがBassVIを買ったときに「3人でユニゾンする曲作るわ!」と思いつきで言ってしまい、
しかし自分はコード先行のタイプのためフレーズ作りにめちゃくちゃ苦戦し、どうにか生まれたのがアウトロのフレーズです。
最終的にはめちゃめちゃ気に入ったフレーズができたので良かったです。

歌詞は「腐り果てた故郷から船を出し "旧海域" を目指す」というストーリー調の歌詞になっています。
"旧海域" が何なのかは全く分かりません。ただその頃が異様に三文字熟語をかっこよく感じる期だったことは覚えています。
また、このあたりは確実にTOKYOGUM "腐海前" の影響を受けています。


timber_screenshot

チューニングから明らかに「こちら側」であることが分かるOuterwildsサントラ作曲者Andrew Prahlow氏の公式解説動画


影響を受けた曲


3. 話をしようよ


完全にsaidです。どうもありがとうございました。
Bメロの半音下降するコード進行と、2サビ後のアルペジオ×スライドタッピングが気に入っています。

歌詞はふみふみこさんの『ぼくらのへんたい』に登場する "パロウ" というキャラクターをモチーフにしています。
この漫画はそれぞれ異なる背景を持ちつつ、「女装をする」という共通点を持つ3人の男子学生の物語です。
パロウは理屈っぽくプライドが高い本当にめんどくさいキャラクターなのですが、どうして俺たちはめんどくさいキャラクターを好きになってしまうんでしょうか……。
ハチクロの真山といい、ぼくらのへんたいのパロウといい、めんどくさくて人間臭いキャラクターって本当にいいですよね……。


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ふみふみこさんの『ぼくらのへんたい』1巻


影響を受けた曲


4. 天使病


三文字熟語ってかっこよすぎる part.2

サビ前でbIIM7→Vm7を使って半音上に転調するのが小手先ポイントです。
前段にbIIM7があるため、Vm7が半音上の調の#IVm7として聞こえてフックになりつつ自然に転調している、ような気がします。

歌詞については、九井諒子さんの短編漫画である "進学天使" をモチーフに書きました。
進学に悩む女子中学生天使の話で、青春の同調・焦燥・憧憬・離別が詰まった大好きな短編漫画です。
九井諒子さんの短編は現実とファンタジーの境目がファニーかつシリアスで好きです。


shingakutenshi

"進学天使" は『竜の学校は山の上 九井諒子作品集』に収録されています。


影響を受けた曲


5. 光が欲しい


罅初期の曲。ここまで(エフェクト的に)ドライな曲が続いたため、「この辺でリバーブ曲やるか~」という気持ちで書きました。
学生時代組んでいたドリームポップバンドで鍛えたリバーブ筋が活きたと思います。

歌詞は市川春子さんの『宝石の国』をモチーフに書きました。
ついに完結しましたね。本当にすごい漫画でした。素晴らしい作品を描いてくださりありがとうございました。
市川春子さんの漫画は短編漫画含め本当に好きで、これから新しい作品がまた読めると思うと本当に楽しみです。


hanashi

「話をしよう」という歌いだしは "エルシャダイ" から。


影響を受けた曲


6. Purkinje


罅を結成してから最初にレコーディングした曲です。
LOWPOPLTD.がサブスクから消えてしまった2024年冬、「俺がLOWPOPLTD.になるか」と思い立ち、書きました。

歌詞は江国香織さんの "ぬるい眠り" という短編小説をモチーフに書きました。
この短編の中でモチーフとして出てくる「プルキニエ現象」が曲名の由来です。
夏の夕方に暗い部屋がやけに青く見えるのはこの「プルキニエ現象」によるもの、だそうです。

手癖で書いた結果、1サビでキーが半音上がり、1サビ後に半音下がり、ラスサビで全音上がるという謎構成になりました。
その結果、ボーカルエフェクターの踏みかえが激ムズになり、ライブでやりたくない曲ランキング1位になりました。


nuruinemuri

『ぬるい眠り』に収録されている "LOVE ME TENDER" もすごく好きな短編です。


影響を受けた曲


7. 毛と皮


友人に誘われ、Phenomena and Explanationsの "休息" という展示に参加したときに考えたことを基に書きました。
この展示の一部では、マイクの風防などの「毛」を持つ無生物が、道具としての文脈から切り離された状態にあるとき、
それがどこか「休息」しているように見える、ということが語られていました。
犬には「毛と皮」があり、人間にはほぼ「皮」しかなく、無生物であるぬいぐるみは「毛」のみを持つじゃないですか、それっておもしれぇなぁって思って。(偽藤原基央)

ちなみに罅犬LINEスタンプにある「恐竜状態」というスタンプは、
この曲の「共鳴状態」という歌詞をオサダが聞き間違えたところから生まれています。


kyusoku

Phenomena and Explanationsの作品はどれも暖かみと面白さがあって良かったです。


影響を受けた曲


8. 衛星


自分にとって「バンド」は「自分の手が届かないところをずっとグルグルと回り続けている存在」で、「それって衛星なんだワ」と思って書きました。
自分の考えていること/感じていることをそのまま歌詞にするのは恥ずかしいのでなるべく避けるのですが、
この曲ではなんか書いてしまいました。結果としてやはり恥ずかしかったです。


astronauts

中学生のころに初めて聴いたときからずっと褪せずに好きな曲です。


影響を受けた曲


9. Everything We Loved


完全にPenfoldです。どうもありがとうございました。
とにかく「俺たちなりの "I'll Take You Everywhere" を作る」ということを考えて書きました。

曲名はアルバム名と併せ、 "drawing pictures of nothing important and everything we loved" という歌詞から取ったり、
加速パートはライブ動画を何度も見て原曲の小節数や加速具合を真似て再現を試みたり、
最後の「表情だって覚えている」のメロディは原曲の "I would take you everywhere" のメロディをなぞっていたりと、
とにかくPenfoldが好きな気持ちをそのまま曲にすることを考えて書きました。

結果として、自分なりのエモを一番表現できたと思います。Penfoldありがとう。


最高のライブビデオ。もう人生で何度見たのか分からん。


影響を受けた曲


結び


「好きな音楽に対する愛・敬意をとにかく詰め込んだ曲をたくさん書きたい」という気持ちでこのアルバムを作りました。
Nothing Importantは各種サブスクリプションサービスで聴けるので、ぜひ聴いてみてください。

nothing important